プリキュアSSの考察

プリキュアSSの考察書きました。例によって同人誌に載せるつもりで書いたので、文体がそれっぽくなっています(つもりですw)。

    • -

ふたりはプリキュアSplash☆Star

 ふたりはプリキュアSplash☆Star(以下、プリキュアSSと略)はどういう物語だったかと考える時に大きな要素は“満”と“薫”の存在だろう。
 敵の大将、アクダイカーンの命の灯火から分けて作られた二人は、いったんは敵としてプリキュアの前に立ちはだかる。
 しかし、満と薫は、主人公の咲と舞を中心とする人達との関係性の中から「絆」をみいだし、また、自然の美しさに触れ(プリキュアSS的に言えば、「花鳥風月」の美しさ)、プリキュアたちの味方になっていく。その中で、「運命は変えられる」というのだ。
 この、「運命は変えられる」という部分に本作の骨子を見る。
 プリキュア的ポジティブシンキングに「願い続ければ、いつか叶う」というのがある。この場合、願い続ければ運命をも変えるという事だろう。
 満と薫の「運命」とは、アクダイカーンより生まれ、ダークホールの戦士として生きる事だろう。
 滅びを信奉するダークホールの戦士から、“緑の里(つまりこちらの世界)”で人間として生きる事へ「運命を変える」事だ。
 さて、なぜ、プリキュアSSにおいて「運命を変える」事が特別視できるのかというと、この作品のメインモチーフが「スピリチュアル」だからである。ここでは「神秘主義」とする。神秘主義とはどういう事か少し端折った解釈をすると、目に見えない力を明文化する事だと筆者は思っている。つまり、「そこに花の妖精がいる」というような事を感じ取り、明確に文章にしたり、他人に伝える事が神秘主義と思っている。
 神秘主義で考えていくと、「運命」とは、すでに決まっている未来である。どのように産まれ、どのように消えていくのかは、見えざる力ですでに決まっているということになる。この見えない力の流れを可視化する行為が「占い」であろう。
 占いが成り立つ世界というのは、「未来に起こる事が確定している」という仮定無しにはあり得ない。運命が決まっているから、「占う」事が出来るのだ。そして、「占い」というのは、スピリチュアル的なものの中で、最も身近な存在であろう。
 つまり、「運命に逆らう」というのは、神秘主義の否定になるのである。
 考え方を少し変えると、「満と薫がプリキュアの味方になる」事が運命だったとも言えるが、その場合でも、「願えば運命は変えられる」のであり、運命よりも願いが上位に位置する。
 プリキュアSSはメインモチーフにスピリチュアルをもって来つつ、スピリチュアルを否定する作品なのだ。
 それは自己矛盾ではなく、神秘的なものより、「今そこにある日常生活」の方が大事というのを再確認する視点である。
 最終話付近こそ、満、薫が準プリキュア化して、「花鳥風月」の力で戦うという形になっているが、終盤からセリフの端々にも「精霊の力」より「絆の力」を重視して戦うようになっている。
 神秘主義を否定しつつも、「精霊(神)は万物に宿る」的な共存が本作のラストだと思っている。
 否定という言葉は少し極端すぎるかもしれない。潔癖的な全否定ではなく、神秘主義的運命より重要なものがあるという、やんわりとした否定だ。
 満と薫自身も含め、プリキュアたちは満と薫の神秘主義的運命を“上書きし”、彼女らを日常生活に内包していき、プリキュアから普通の少女に戻る。そして、日常のすばらしさを謳歌するのだ。

 ダークホールについても考えたい。彼らの「滅びの力」の思想は一見不可解だ。しかし、考え方によっては道理がいく。ラスト間際、ゴーヤーンが思い浮かべたイメージから察するに、「滅び」とはビッグバン寸前のブラックホールと推測できる。また「ごちゃごちゃした世界を無にしたい」的なセリフもある。それは、時が経つにつれエントロピーが増大した(散らかった)宇宙をビッグバンからやり直したいという事なのだろう。これは、「あえて破滅を望む」という考え方だ。わかりやすく身近にすれば、「人間は環境破壊するばかりだ。地球のためを思ったら滅びるのが究極のエコだ」という考え方になる。それを極端にしたのがビッグバンからのやり直しだ。これは、“神の視点”だ。世界を創造したが失敗したのでやり直したい、という事だ。ダークホールの滅びの力とは、「ビッグバンによる世界再創造」を目指した宗教なのではないか。アクダイカーンを神の偶像とし、ゴーヤーンを教祖とした宗教ではないか。この宗教は必然的に一神教であろう。他の宗教は「滅びてしまえばいい」のである。滅びなくても、宇宙全体がブラックホール化しビッグバンに至れば、あってもなくても同じである。こう考えると、終盤のゴーヤーンのセリフに筋が通って見えてくる。
 それに対しプリキュア側は「花鳥風月」で挑む。花鳥風月とは本来、自然の美しさや風流さを表す言葉であるが、プリキュアSSではそこから転じて、万物に精霊が宿るという、アニミズム的な意味になっている。
 世界再創造を目指す、“究極的な”一神教である「滅びの力」に原始的な宗教「アニミズム」で挑む。結果は書くまでもなく、プリキュア側の勝利だ。これは、「一神教よりアニミズムの方が日常的だ」ということに繋がり、至極日本人的宗教観だ。「日本人は無節操に宗教を扱い無神論者的だ」といわれがちであるが、「全ての物に精霊(魂)が宿る」というアニミズム的な、または、それを発展させ「八百万の神がいる」とした神道を無意識下に信仰している人はかなりの割合でいるのではないかと考える。
 この無意識下の「アニミズム」や「神道」が「日常」のそばにあるとしたのが、プリキュアSSのラストだと捕らえている。

    • -

神秘主義アニミズムはなんか本読んだ方がよさそう…<自分。

      • -

今日のシェイプボクシングもおやすみ。
体重は+0.8kg。
うーん、食べ過ぎた記憶あんまり無いんだけど。

      • -

今日のラブプラスもさくっと。